*2018年*

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  盤上の向日葵  柚月裕子  ☆☆☆☆
山中で発見された白骨遺体のそばにあった遺留品は、初代菊水月作の名駒だった。何百万円もする高価な駒がなぜ遺体と一緒にあったのか?刑事の石破と佐野は、その真相を追い求めたのだが・・・。

平成六年、山形県天童市。物語は、注目の若手棋士同士による対局会場に二人の刑事がやってくるところから始まる。若き天才棋士・壬生と実業家から転身して特例でプロになった東大卒の棋士・上条との対決だった。なぜ刑事がこの場に現れたのか?そこから話が過去にさかのぼっていく・・・。
少年時代、父親から虐待を受けていた上条。その上条を不憫に思い、わが子のように可愛がり将棋を教えてくれた唐沢。そして、東大時代に出会ったさまざまな人物。上条は、彼らを通して将棋の持つ光と影の部分を味わうことになる。その部分が切々と描かれている。
上条はこの事件にどう関わっているのか?また、なぜ高価な駒が被害者と一緒にあったのか?いったいそこにはどんな真実が隠されているのか?否応なしにも期待が高まっていく。
最初は面白い話だと思った。けれど、読み進めるうちに松本清張の「砂の器」に似ていることに気づいた。 (調べてみたら、やはり作者は「砂の器」を意識してこの作品を書いたことが分かった。)気づいたら、そこから先はどうしても「砂の器」と比較しながら読んでしまうことになる。はっきり言って、「砂の器」よりは劣る。「砂の器」と比較されるのは、この作品にとってはマイナスだと思う。主人公にもなかなか感情移入できなかった。それに、遺体とともに駒が埋められた理由も、説得力に乏しい気がする。上条の人生は悲しい。読んでいて胸が痛んだ。けれど、それが素直に感動に結びつかなかったのが残念だった。


  AX  伊坂幸太郎  ☆☆☆☆☆
三宅は、「兜」と呼ばれる超一流の殺し屋だった。だが、息子が生まれたときに、殺し屋を辞めたいと思った。辞めるために必要なお金を稼ぐため、不本意ながら殺し屋を続ける彼のもとに、意外な人物が現れた!5編を収録。連作集。

「兜」は超一流の殺し屋だ。誰にも知られずすばやく依頼をこなす。人の命を奪うことに何のためらいもなかった。けれど、その考えは、息子が生まれたときに一変する。彼は殺し屋を辞めたいと思う。だが、辞めたいと言ってすんなり辞めることができるほど、甘い世界ではない。兜を取り巻く状況は、しだいに厳しくなっていった・・・。
兜は、家庭ではまったく妻に頭が上がらない。息子の克己が同情するほどだ。でも、それは妻が怖いわけではなかった。彼はたぶん妻の笑顔が見たかったのだと思う。妻の幸せそうな顔が見たかったのだと思う。彼が大切にしたいものは、妻と息子の幸せだった。それだけに、平穏な生活を手に入れたいと願う兜の思いは、痛いほど読み手に伝わってくる。兜の思いに胸が締めつけられた。はたして、兜の願いはかなうのか?だが、兜の運命は思わぬ方向へと進んでいく・・・。
ラストへの収束の仕方は、見事だった。作者らしいと思う。切ない中にも笑いがあり、そして温もりがあった。読後も強く余韻が残る。読みごたえのあるとても面白い作品だった。


  宮辻薬東宮  アンソロジー(複数著者)  ☆☆☆
ちょっぴり怖い短編ミステリーのバトンリレー。宮部みゆき、辻村深月、薬丸岳、東山彰良、宮内悠介。5人のアンソロジー。

宮部さんの「人・で・なし」は、かなりのインパクトがあった。じわじわと迫りくる恐怖。読み手に「さすが!」と思わせる話だった。辻村深月さんの「ママ・はは」も、サラリとした何気ない会話の中に実は恐怖が潜んでいるというぞっとする話だった。このふたつは読みごたえがあったのだが、他3編はそれほど面白いと思わなかった。特に宮内悠介さんの話は、ラストを飾るのにふさわしいとはどうしても思えなかった。恐怖でもミステリーでもない中途半端な話だった。
宮部みゆきさんの書き下ろし短編を辻村深月さんが読み、短編を書き下ろす。その辻村さんの短編を薬丸岳さんが読み、書き下ろす。薬丸さんの短編を東山彰良さんが・・・。そういうふうにして2年かけてつないだそうだが、そんなふうには全く感じない。それぞれバラバラに書いてひとつの本に収めたものと、何ら変わらない。前の話を引き継ぎながら新たに展開していく話の方が、ずっと興味深いし面白いように思う。その方が、前の話を読んでから書き始めるということが生きてくるのではないか。人気作家5人のアンソロジーということで期待して読んだのだが、少々期待外れだった。