*2018年*

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  守教  帚木蓬生  ☆☆☆
厳しい日々の暮らし。百姓たちは、心のよりどころを求めキリシタンになった。だが、戦国時代には布教に熱心だった権力者たちも、時代が移り変わるにつれしだいに考えを変えていく。そしてついに、禁教令が!史実をもとにした、命を賭けてキリスト教を信じ続けた人々の記録。

戦国時代に伝来したキリスト教は、またたく間に日本に広まっていく。その教えに共感したのは一般民衆だけではない。時の権力者も大勢いた。
「自分たちの存在を認めてくれる教え。」
それは、九州にある村々の人たちにも生きる力を与えた。日々の暮らしの生きがいとなった。だが、時代は変わり、キリスト教徒に対する厳しい弾圧が始まった。棄教を迫る激しい拷問。転ぶ者、殉教する者・・・。人々の間に動揺が走る。けれど、彼らは信仰心を捨てなかった。ひそかに信仰は守られた。禁教令が出されてから開国まで、それは延々と続ていった。
「自分たちの信念を貫きとおす!どんな迫害にも負けない!」
信仰とはこれほど人に勇気と力を与えるものなのか!読んでいて胸が熱くなる。
重みのある話で感動的な場面もあったが、淡々と述べられる状況説明のような描写も多くて、とても読みづらかった。面白いという話ではないけれど、こういう歴史があったのだということを、多くの人に知ってもらいたいと思う。


  最後の晩ごはん 小説家と冷やし中華  椹野道流  ☆☆☆
深夜に営業する定食屋「ばんめし屋」。常連客の小説家・淡海五朗には、誰にも言えない心の傷があった。そのために冷やし中華は決して食べなかったのだが・・・。最後の晩ごはんシリーズ2。4編を収録。

ねつ造スキャンダルがもとで芸能界から姿を消した海里だが、しだいに「ばんめし屋」の暮らしに慣れてくる。料理も積極的に覚えようと努力している。そんな海里だが、かつての後輩が訪ねてきたり、芸能記者に居場所を知られ押しかけられたりと、心穏やかではない。「まだ役者に未練がある。けれど、それはかなわない。」心の葛藤が痛々しくもある。
一方、冷やし中華断ちしている常連客の小説家・淡海には、とりついている幽霊が・・・。海里は、どうしていつも幽霊が淡海と一緒なのか、その理由を突き止めようとする・・・。
人が心の中に抱えているさまざまな悲しみや苦悩。今回も、作者はそれをていねいに描いている。登場人物の心理描写が細やかだ。なので、読んでいて感情移入してしまう。つらくても、苦しくても、悲しくても、人は前を向いて生きなければならないのだ。
今回も面白かった。心の中にほのぼのとしたものが残った。


  最後の晩ごはん ふるさととだし巻き卵  椹野道流  ☆☆☆
イケメン俳優として順調に歩んでいたはずの海里だったが、あるねつ造スキャンダルがもとで活動を休止せざるを得なくなった。だが、ふるさとに戻っても彼の居場所はなく・・・。絶望する彼を救ったのは、定食屋を営む留二だった。最後の晩ごはんシリーズ1。

行くあてのない海里を救った留二。彼の営む定食屋は、夜に開店し、始発が走る頃に閉店する。何だか、ちょっと不思議な定食屋だ。だが、不思議なのはそれだけではなかった。お客は普通の人間だけではない。時には幽霊も!海里には霊感のようなものがあった。幽霊が見えるのだ。なぜ幽霊は定食屋に現れるのか?留二や海里の温かな心が、幽霊になった者たちが抱える切ない思いに寄り添う。そして、そこで出されるおいしい料理が、彼らの心を癒していく。
読んでいると心がほのぼのとしてくる。海里の今後も気になるし、留二という人間も気になる。そして、眼鏡の付喪神ロイドのことも。シリーズで10巻あるが(2019.3.18現在)、これから少しずつ読み進めようと思っている。


  クール・キャンデー  若竹七海  ☆☆☆
渚の兄・良輔の妻が、ストーカーを苦にして自殺を図った。一命は取りとめたと思った矢先、容態が急変して亡くなってしまう。時を同じくして、ストーカーだった男も謎の死を遂げる。警察は、ストーカーだった男を殺したのは良輔ではないかと疑い始めたのだが・・・。

兄・良輔の無実を晴らすべく、渚は行動を開始する。ストーカーだった男を殺したのはいったい誰なのか?徐々に明らかになる真実には、「そういうことだったのか!」と驚かされた。けれど、本当の驚きは、最後の最後に用意されていた。ラスト1行は、全く予想外だった。
軽いタッチで書かれていてさらさら読めるミステリー作品だと思っていたが、実は、巧みなストーリー展開で伏線もあり、実に濃厚な作品だった。
それにしても・・・。人は、心の中で何を考えているのか分からない怖い生き物なのだと、あらためて感じた。決して、見かけだけで判断してはいけないのだ。


  西一番街ブラックバイト  石田衣良  ☆☆☆☆
池袋の雑居ビル。その最上階の8階から屋上に通じる外階段から、若い男が飛び降り自殺を図った。彼は、急成長しているOKカレーという飲食チェーン店の従業員だった。無能呼ばわりされ、退職を強要されていた。だが、この企業は、サービス残業、賃金未払い、長時間労働などが問題になっているブラック企業だった・・・。表題作「西一番街ブラックバイト」を含む4編を収録。IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズ12。

ブラック企業問題は、現実にも同じようなことがあったので読んでいて胸が痛かった。残念だが、この問題は完全には無くならないと思う。でも、いつかは無くなってほしいと切に願う。
「ユーチューバー@芸術劇場」は、時代の世相を色濃く反映している。再生回数を増やすためにはなんでもやる・・・にはならない。物事には限度というものがある。限度を超えたときに自分の身に降りかかる災難にどう対処すべきか、そのことも充分に考えて行動したほうがよさそうだ。
どの話も興味深く読んだ。時代の流れの中、タカシとマコトはこれからどう生きていくのか?どこへ行こうとしているのか?このシリーズから目が離せない。