2008年08月19日
コールドゲーム(荻原浩)

4年前のいじめに関わった人間が、一人ずつ何者かに襲われていった。とろ吉と呼ばれ、いじめられていた廣吉剛史の存在が浮かび上がる。決して姿を現すことなく復讐を続ける廣吉。彼を追うかつてのクラスメート渡辺光也たちは、やがて驚くべき真実を知ることになる・・・。
いじめていた者たちにとっては過去のできごとだった。「今さらなぜ?」「もうすんでしまったことなのに・・・。」などと思うのは当然かもしれない。だが、いじめられていた者にとっては、いつまでも現在形のままなのだ。思い出すたびに心が血を流す。決して忘れることはない。一人の少年を寄ってたかっていじめる描写は、読んでいて胸が痛い。「何か言えば、今度は自分がいじめの標的になる・・・。」だから、誰も何も言えない。何も言わない。こんな状況は異常としか言いようがない。ひどい話だ。
ラストはある程度予想がついた。だが、それでも衝撃的だった。廣吉一家に平穏な日々が訪れることはもうないのか・・・?苦い思いが残る作品だった。
ゆこりん : 17:20 | コメント (0) | トラックバック (0) | 作者別・・おぎわらひろし
2008年08月09日
子どもたちは夜と遊ぶ(辻村深月)

始まりは高校3年生の男の子の行方不明事件だった。その後次々に起こる事件。カギを握る木村浅葱の心に潜むものは?また、ゲーム感覚の殺人事件に隠された驚愕の秘密とは?
「i」という謎の人物。その人物と会うことを切に望む木村浅葱。会うために続けられる残酷なゲームの犠牲になる人たち。その内容はあまりにも衝撃的で、読んでいてつらくなるほどだった。「ここまでしなけらばならないのか・・・。」浅葱が持つ異常さには言葉もない。だが、同情する余地などないはずなのに、彼の心のうちを知れば知るほど切ない気持ちにさせられていく。彼の生い立ちも哀れだ。心を通い合わせていたはずの狐塚孝太や月子と、浅葱との関係も切ない。だが、切ないばかりではない。ラストに待っていた真実には驚かされた。
ストーリーが立体的に組み立てられ、登場人物の描写もていねいで、文庫本上下あわせて1000ページの大作だが長さをまったく感じなかった。幅も深みもある、読み応え充分の作品だった。
ゆこりん : 16:38 | コメント (4) | トラックバック (0) | 作者別・・つ他
2008年07月25日
4TEEN(石田衣良)

ナオト、ダイ、ジュン、テツローの4人は、14歳で中学2年生。
「病気のこと、恋愛のこと、家族のことなど、いろいろ考えることはあるけれど、4人一緒なら何とかなるさ!」
そんな彼らの、喜び、悲しみ、悩み、苦しみを、あざやかに描いた青春小説。直木賞受賞作品。
「未来がきらきら光り輝いて自分たちを待っている。」そんなふうに考えている時期が誰にでもあると思う。14歳の4人の少年たちも、そんなふうに考えているのではないだろうか。ナオトの病気は深刻なものがあるけれど、彼らはくよくよ考えない。常にまっすぐ前を向いて進んで行こうとしている。その姿は、とても純粋で一途だ。今どきこんな中学生は現実にはいないと思うが、この作品を読んでいると、いたらいいなとか、いてほしいと思ってしまう。読みやすく、さわやかさを感じさせる作品だった。
ゆこりん : 15:45 | コメント (2) | トラックバック (0) | 作者別・・いしだいら
2008年07月22日
空の中(有川浩)

国産飛行機のテスト飛行での事故。自衛隊機の事故。このふたつに関連はあるのか?調査が進められていく。一方、父の操縦する自衛隊機が事故を起こしたことを知らず、息子の斉木瞬は父が通るであろう区域の海岸にいた。そしてそこで不思議な物体を見つける。飛行機事故と不思議な物体。何の関係もないように見えたふたつがつながるとき、人々は今まで体験したことのない危機に見舞われる・・・。
突然、自分にとって大切な、かけがえのない人を喪ってしまったら?心を襲うのはすさまじい悲しみと、喪失感と、そして後悔なのではないだろうか?「悔やんでも悔やみきれない」その思いが遺された者の心に血を流させる。作者の、苦悩する登場人物たちの描き方がとてもいい。彼らの心の動きが読み手にも伝わってくる。また、「白鯨」と名づけられた謎の生物本体と、白鯨と人間との仲介役の高巳の会話が絶妙だった。しだいに言葉を覚え人間という生き物を理解していく過程はとてもよく描かれていて、読んでいてどんどん物語に引き込まれていった。「人類と白鯨に共存の道はあるのか?」憂いを抱いてラストへ・・・。
「姿かたちは違っても、心と心は通じ合える。」
読後そんな思いを味わえた。余韻が残る心温まる作品だった。
ゆこりん : 17:32 | コメント (2) | トラックバック (0) | 作者別・・あ他
2008年07月20日
愛しの座敷わらし(荻原浩)

東京から田舎へ引っ越すことになった高橋家。一家の主人晃一が選んだ家は古民家!!その古民家で起こる不思議なできごとの数々は、座敷わらしのしわざだった・・・。バラバラになりかけた高橋家は座敷わらしとのふれあいを通して、いつしか家族の絆を取り戻していく。
読んでいる途中で、必要以上の描写にダラダラとした感じを抱いたが、それを補って余りある内容だった。家族の心がバラバラになりかけていたときに現れた座敷わらし。晃一・史子夫妻、娘の梓美、息子の智也、そして晃一の母澄代。それぞれの抱える問題は、いつしか和らいでいく。座敷わらしは福をもたらすと言われているが、福をもたらすのではなく、身近にありすぎて気づかない幸福に気づかせてくれる存在なのではないかと思う。高橋家の人たちもそれに気づいたとき、再び家族の絆を取り戻す。「私たちは、大切なものを犠牲にしたリ、失くしたり、忘れたりしながら毎日の生活を送っている。」そのことを強く感じずにはいられない。座敷わらしの生まれたいきさつにはホロリとさせられたが、全体的にほのぼのとした心が温まる作品になっている。ラストの1行は絶妙!輝いている♪
ゆこりん : 15:59 | コメント (0) | トラックバック (0) | 作者別・・おぎわらひろし











