変身  東野圭吾
脳に致命的な損傷を負った成瀬純一。彼は世界初の脳移植で
奇跡的に命をとりとめる。
健康を回復し喜ぶ彼だが、灰色の恐怖が彼を包み込もうと
していた・・。
この作品を読んで、人格とは何かを考えさせられました。どこまでが
その人の人格なのか?成瀬純一は確かに外見は変わりません。
しかし、内面は180度変わったと言ってもいいくらいです。
周囲の人間はとまどいます。恋人でさえ・・。
「脳」。人はこの領域にだけは手を触れてはいけないのかもしれま
せん。「脳」はその人の心を作り出しているからです。もし「脳移植」が
本当に行われたなら、本来の自分の心とは別の心が入り込むことに
なってしまいます。私は絶対にそう思うのですが・・。


希望の国のエクソダス  村上龍
80万人の中学生が学校を捨てた!
彼等は情報戦略を駆使してビジネスを展開する。そうして全世界が
注目する中、彼等のエクソダス(脱出)が始まった・・・。
金融、経済、教育、ネットコミュニケ−ションなど、3年に及ぶ取材の
すえ書かれたものだけに、胸に迫るものがあります。どれも現実
にはあり得そうなことだからかもしれません。作者の「現代を巡る
絶望と希望を書き尽くす」という動機は完璧に表現されているのでは
ないでしょうか。
教育とメディア、この二つを考える時、暗澹とした気持ちになるのは
作者だけではないと思います。だれもが憂えている問題、それを今
敏感に感じ取っているのは、もしかしたら枠にはめられた教育を
受けている中学生かもしれません。
希望が見えない現代社会。この本は、人はこれから何をなすべき
かを問いかける貴重な存在のような気がします。


そして誰もいなくなった  アガサ・クリスティ−
それぞれ見も知らぬ、さまざまな職業、年齢、経歴の男女10人が
あるひとりの男から、彼の所有する島へ招待される所からこの物語は
始まります。
しかし、島に着くと招待してくれた男の姿はなく、10人だけで島で
過ごさなければならなくなります。
だが、その10人を待っていたのは、それぞれの過去の犯罪を暴く
不気味な声。そして、ひとり、またひとりと彼らは殺されていきます。
出入りが不可能な孤島で、ついには全員が殺されてしまうのです!
犯人はこの人かな、あの人かなと思いながら読んでいるうちに、
最後に全員が殺されてしまうこの話には驚きました。
島への出入りも不可能、全員が死んでいる・・。犯人はどこ?
とにかく先へ先へと気持ちがあせります。そして、ラストに待って
いた結末は・・・。さすがアガサ!と叫びたくなる作品でした。


燃えよ剣  司馬遼太郎
竜馬がゆく」と並び、”幕末もの”の頂点をなすと言われた
長編です。竜馬同様「土方歳三」という人物が、実に魅力の
ある人物として描かれています。
「竜馬がゆく」とほぼ並行して書かれた作品なので、読んでいて
似通っているな、と感じるところがあります。しかし、最初から
最後まで読者を飽きさせることなく、作品の中へ没頭させるのは、
やはり司馬遼太郎という作家の持つ力なのでしょうか?
新選組副長として、激動の幕末を風のように駆け抜けた
「土方歳三」。
最後の戦いを前に彼の胸に去来したのは、果たしてどんなこと
だったのでしょうか?


はじめてのホ−ムペ−ジ〜HTML入門  森健二
この本に出会わなければ、ホ−ムペ−ジを作ろうなどと考えなかった
でしょう。
何千円も、時には一万円を超えるホ−ムペ−ジ作成ソフトなんて必要
ありません。本一冊あれば作れちゃうんです。
ひとつひとつていねいに、順を追って説明してくれているので無理なく
作っていくことができます。
これからホ−ムペ−ジを作ろうと思っている人には、絶対のおススメ
です。


追悼の達人  嵐山光三郎
「追悼はナマの感情が出る。人が死ぬのは突然だから、書く側はまだ
心がうち震えて、心情をナマのまま書く。」
作者がこう後書きで述べているとおり、いろいろな著名な作家の
死に際しては、実にいろいろな追悼の言葉が述べられています。
そこには、作品を読むだけではわからなかった作家の生身の部分が
実に鮮やかに浮き彫りにされています。
誰が誰の追悼で何を書いたのか、興味深く読みました。


生き上手死に上手  遠藤周作
この本の中で印象に残ったのは「我々の人生のどんな嫌な出来事や
思い出すらもひとつとして無駄ではない。無駄と見えるものに人生の
役立つ何かが隠されているのであり、それは無駄どころか貴重な
ものを秘めている。」という言葉です。そう考えると、無駄に人生を
送っている人は1人もいないことになります。
死ぬ時に「ああいい人生だった。」と言えるのが上手な生き方をした
ということであり、そう思いながら死ぬのが上手に死ぬということ
ではないでしょうか。


ストロボ  真保裕一 
これは一人の男を主人公とし、現代(50代)、40代、30代、
20代とどんどん過去にさかのぼって、その男の人生を見つめて
いる本です。あたかも写真のフィルムを巻き戻すように、人生を
巻き戻し、過去の姿をあぶり出していきます。
出会い、別れ、挫折を繰り返し、彼が手にした名声・・・。彼は
それで本当に幸福なのでしょうか? 
ほろ苦く、切なく、そしてセンチメンタルな気持ちになって
きます。読後、心に強く印象が残る作品でした。


クリスマスに少女は還る  キャロル・オコンネル
物語はクリスマスを控えたある日、二人の少女が姿を消すところ
から始まります。
この事件を担当する若き刑事。彼には15年前のちょうど同じ
季節に誘拐され殺された双子の妹がいました。
その事件と今回の事件はなにか関係があるのか?また二人の
少女の運命は?
作者の巧緻をきわめたスト−リ−の組立には、読者をうならせる
ものがあります。ラストに待っているのは「衝撃」か「感動」か?
それとも・・?是非自分の目で確かめてください。


蒲生邸事件  宮部みゆき
突如、ホテル火災に見舞われた受験生、孝史。謎の男に助けられた
先はなんと昭和11年。今まさに二・二六事件が起きようとして
いる東京だった!
主人公は、現代に戻れるのか?はたまた孝史がタイムスリップした
先の人たちのその後の運命は?
次がどうなるのか知りたい一心で、一気に読んでしまいました。
この作品の大胆な発想、さすがは宮部みゆきさんです。
ラストも感動的です。