火花〜北条民雄の生涯  高山文彦
ハンセン氏病は以前、ライ病として人々の恐れられていました。
不幸にしてこの病気に罹った人たちは、一定の地域に隔離され
ました。今なら考えられないことです。
北条民雄、彼も若くしてこの病に罹りました。
彼は、限られた場所、限られた命の中で、小説を書き続けました。
常に死と隣り合わせの生活・・それはどんな風だったのでしょう。
彼の、火花のようにパチパチと燃えた短い命・・・。
命について考えさせられる作品でした。


だからあなたも生きぬいて  大平光代 
いじめがきっかけで割腹自殺をはかったり、荒れた生活を送っていた
著者が、ドン底から立ち直り、弁護士になるまでを書いた作品です。
人はきっかけさえつかめれば、立ち上がることができるということ、
絶対に自分の人生をあきらめてはいけないということを、実感させて
くれる作品です。


聖(さとし)の青春  大崎善生
幼い頃にネフロ−ゼという恐ろしい病気にとりつかれた彼は、病院の
ベッドの上で、将棋のおもしろさを知ります。
「時間がない。」そう言い続けながら、彼は将棋界の頂点をめざす
ため走り続けます。
天才棋士と言われながら、若くして逝った一人の青年の記録です。
病気でなければ、頂点に立つことも夢ではなかったのにと思う反面、
病気にならなかったら、将棋と出会うこともなかったかもしれないと
思うと、複雑な気持ちになりました。


泥流地帯  三浦綾子
死者144人を出した1926年(大正15年)の十勝岳噴火で
大被害を受けた上富良野村(現上川管内上富良野町)を舞台に、
誠実さを失わずに必死に生きる二人の兄弟の姿を描いた作品。
この作品を読んで、噴火の恐ろしさを知りました。人の力では
どうすることもできない自然の力・・・。
しかし、人はどんな悲劇の中からでも立ち上がることができると
いうことも知りました。
困難な状況の中でも、希望や自分らしさを失わずに生きていく
主人公の姿は、読む者にも勇気を与えてくれます。
上富良野町には「泥流地帯」の碑があります。


黄金を抱いて翔べ  高村薫
銀行本店の地下に眠る6トンの金塊。6人の男達がしくんだ
金塊強奪計画とは?ハイテクを駆使した防御システムは突破
可能なのか?日本推理サスペンス大賞受賞作品。
緻密で、迫力ある文章は、さすがです。最後まで飽きさせ
ないで、読者をグイグイ引っぱっていきます。
彼女の作品の魅力は、デティ−ル(細部描写)がしっかり
しているところからくるのではないでしょうか。
デビュ−作です。


沈黙  遠藤周作
島原の乱が鎮圧されてまもないころ、キリシタン禁制の厳しい
日本に潜入した司祭ロドリゴ。彼は日本信徒たちに加えられる
残忍な拷問と、悲惨な殉教を目の当たりにして、ついに背教の
淵に立たされる・・・。
日本と西洋の思想の違い、「神の存在」と「神の沈黙」。
ロドリゴを通して、キリスト信仰の問題を衝く作品です。
彼がキリスト信仰を棄てていく心の過程が、見事に描かれて
います。人間の心の内面に深く突き刺さる、読み応えのある
作品でした。


レディジョ−カ−  高村薫
様々な人生を送る男達が集まって、ある誘拐計画をたてた。
誘拐相手はなんと人ではなく、会社丸ごとだった!
いろいろな人間の思惑が交錯する中で、誘拐計画がたてられ、
そして実行に移されていく。そのやり方とは、また身代金の
受け渡し方法は?
作者の緻密な文章が光る作品です。長い作品ですが、最後まで
あっという間に読んでしまいました。


チャイニ−ズマザ−  スティ−ブン・W・モッシャ−
「どんな手段を使ってもかまわない。とにかく人口を減らせ。」
毛沢東が始め、そして年々強化されていった”一人っ子政策”。
この悲劇と闘い続けた中国人女性チ・アンの感動の記録です。
強制的な中絶あるいは避妊手術など、想像を絶する中国の政策に、
この作品を読んだ人全てが驚くことと思います。
「どうしても二人目の子供が欲しい。」そう願ったチ・アンの
とった行動は?
女性として、読んだ後深く考えさせられる作品でした。


戦争中の暮らしの記録  暮らしの手帖編
あの戦争の間、ただ黙々と生きてきた人たちが、どんなふうに
暮らし、どんなふうに死んでいったかの記録です。
私は戦争を知りません。でもこれを読んで、戦争の悲惨さは
決して忘れてはいけないということを、強く感じました。
この本がずっと読みつがれていくこと、そして二度と戦争が
起きない平和な世の中が続くよう、祈りたいです。


タイタニック号99の謎  福地怜
1912年4月14日、超大型豪華客船タイタニック号は
他の船からの度重なる「氷山、浮氷原発見、警戒されたし」の
通信を無視し、海難史上最大の悲劇を生んでしまいました。
なぜ、警告を無視して高速で走り続けたのか。
今なお様々な謎につつまれたままのタイタニック号の遭難。
著者はその謎を一つ一つ検証していきます。映画を見ただけに
興味深い作品でした。